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被害【昭和16年11月日向灘地震】大分市

|災害番号:004711|固有コード:00471102

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市町村
大分市

概要(被害)

極めてまれに屋根瓦がずれ落ちる、ずれ下がる、また飾り窓の破損などがあった。屋内に柱のない納屋の倒壊、また土塀の倒壊もあったが、これらの被害は極めて稀だった。

災害概要

日向灘を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生。大分県では沿岸部で多少の被害があった。また、津波が発生し日向灘沿岸に到達した。波の高さは最大1メートルほどだった。

【出典:日本被害地震総覧】

昭和16年11月19日午前1時46分頃、日向洋に起った地震は、震源が陸地からへだたっていたために一般に大した被害こそなかったが、規模においては昭和5年11月26日の北伊豆烈震をしのぐものと考えられ、九州の東海岸および四国の西海岸に浪高1メートル近くの小津波を生じた程であった。
 踏査報告よりこの地震の概要を記せば、震央は観測資料よりみて東径132.1°、北緯32.6°で、宮崎の北東方約100キロメートルの沖合にあたる。(延岡東方約40キロメートル)津波を生じたことからも震源は極めて浅いことが推定される。津波は九州の東岸一帯と四国の南西沿岸にわたって襲来し、最大1メートルくらいの波高であった。したがって津波による大した被害はなかった。震度はこの津波が襲来した沿岸に近い区域では、だいたい強震としては弱い程度であるが、他の九州全般および四国中国の西部では、中震あるいは弱震の所が多い。人吉では異常的に烈震で注目に値する。以下大分地方の被害状況について述べる。

A. 大分市
 市街をみるとほとんど被害を見受けないが、極めて稀に屋根瓦のズリ落、ズリ下りおよび飾窓の破損などあり、また春日神社の石灯篭は多数の中11個転倒しその中7個は東→西、3個西→東、1個北→南へ転倒した。
なおまた屋内に柱のない納屋の倒壊あるいは土塀の倒壊などもあったが、前述のようにこれらの被害は極く稀で、単に市街をみれば、通常硝子障子の破損あるいは、壁の亀裂などは一般に見受けられない。納屋の倒壊なども屋内に一本の柱もないものであった。これらのことからみて大分市内の震度は中震(Ⅳ)の極く強い方である。また大分における余震は、有感無感合せて19日19回、20日7回、21日2回、22日2回と急速に減少している。この中19日の3回が有感であった。大分港内にある検潮儀には地震津波の痕跡もない。

B. 津久見町
 ここでは某商店の飾窓が破損したのみで、硝子戸あるいは屋根瓦などの破損は一般になかった。また井水の変化あるいは発光現象などの異常現象も見聞しなかった。震度は中震(Ⅳ)の中では、極く強い方である。津久見港の検潮儀の記象にも、湾の静振が発達している為か津波の初めならびに地震記録が判明しない。しかしだいたいにおいて地震後30~40分位から津波が現れ、次第に発達し約2時間後に最大に達して全振幅49センチ程になり、週期は20分位でその勢力は仲々衰えず、数時間後においても、20センチ位の振幅であった。

C. 佐伯市
 河口より1キロメートルほどのところにある検潮儀には全振幅約10センチくらいの津波が記録された。震度はⅣの強い方であった。

D. 由布院村
 震度はⅤの弱い方で、村全体からみると石灯篭の倒れたのが1ヶ所、信用組合大倉庫内の壁に亀裂を生じたり、神社の屋根の一部が落ちたり、その他二、三の民家で壁に亀裂が入った所もある位で全般には大したことはなかった。信用組合倉庫内の壁の亀裂は主に東側と南側に多く、その大部分は上下方向に縦に真直に入っている。この地方に感じた余震は、19日18回、20日6回、21日1回、22日2回計27回の有感地震があった。中3回は弱震程度であった。
 同村の山崎という辺りの温泉温度をみると、昭和15年5月に54.0℃であったものが、昭和16年11月18日は57.5℃、19日56.0℃、20日52.0℃、21日57.0℃、22日57.3℃を示している。測定は午前7時頃行なった由であるが、15年5月以来欠測であるので18日の温度を以て、突然昇温したとは断定しかねる。ただしそれ以後の実測と比べると温度は一度降下し、次いで再び旧に復しつつあるかに見受けられる。附近の温泉湧出量をみるに、山崎では温泉の自然湧出が約30分全く止った場所が1ヶ所あった。駅附近では地震後常に減量する箇所があり今回も同様であった。その他量がふえて昇温したものも1ヶ所あった。この附近の石松村でも山田氏所有の自然湧出の温泉は増量しかつ昇温した。そのすぐ附近にある田中氏所有の人工湧出のものは減量し且降温した。由布院附近では、だいたい南南西~北北東にわたって温泉脈があるようである。
 この附近では発光現象-地鳴などもなく、また地震の前兆のようなものも見受けなかったが、数日前から異常な高温で古老の中には地震の心配をしたむきもあったそうである。

E. 別府市
 震度は中震と推定される。全般的に取り立てていう程の被害はなかった。温泉の湧出量は大体において地震後増量し、昇温している。特記すべき現象はみられなかった。

総括
 大分県下における被害およびその他の現象をその後の報告に基づき、概括的に述べると次のようである。

(1)地震による被害(大分県全般、統計数は県警察部の調査による)
負傷者 6名 (中1名重傷)
全壊家屋 8棟 (住家3,非住家5)
半壊家屋 10棟 (住家2,非住家8)
一部破損 49棟 (住家36,非住家13)
 ただし一部破損とは、屋根瓦の損傷、壁の剥落、土塀の破損、煙突の破損などをいう。
 その他陶器、硝子商品の破損多少あり、また地震と同時にほとんど全県下停電数時間に及んだ。電信電話線も故障を生じた箇所が相当あったが、同日中に復旧した程度であった。被害の大部分は、大分市内の局部、大分市附近の一部であって他の一部は直入郡竹田町、北海部郡坂の市町、大野郡三重町などである。

(2)津波の現象

 地震の発生時刻当時は、幸に干潮時であって本県下海岸附近では津波に気付かなかった所が多かったが、県下二三の検潮儀記録につき調査した処数十糎程度の津波現象を認めることができた。(大分、津久見、佐伯)

(3)発光現象
 地震と同時に所謂発光現象を認めたものが多数あり、なかでも大分新聞記事に「鶴崎町の某氏は地震発生の時刻頃稲を倉に入れるため田にありたる処、東西に亘り異様な光を見、異常な音響と同時に地震を感ず云々」とあったため、直接本人に面会して尋ねた処「自分は確かに電線のスパークと思う」といったのを新聞に掲載されたものと判明した。当日は雷の現象が各地にあり、光の色を綜合すれば電光またはスパークによるものと認める方が妥当かと思われる節が多い。

(4)余震その他
 本所地震記象紙には19,20日の両日は、やや多数の地震を記録したがその後は平常に復した。なお地震直前および地震後、温泉が上昇した処がある。また別府、由布院などに局発性有感地震が、やや多くなった模様である。(由布院の項参照)
(鷺坂、本間、生沼、伊藤等:験震時報第12巻第3号抜粋)

【出典:大分県災害誌(調査編)】

災害データ

地震発生時間
01:46
マグニチュード
7.2M
震源の深さ
33キロ
最大震度
5
最大震度観測地
直見
津波有無
あり
最大津波の観測地(県内)
津久見
最大津波の高さ(県内)
0.35
死者・行方不明者数
-
負傷者数
10人
住家全壊/全焼数
3戸(棟)
住家半壊/半焼数
2戸(棟)
住家一部損壊数
36戸(棟)
床上浸水数
-
床下浸水数
-
道路被害 ※事前通行規制は除く
-
橋梁被害
-
山・崖崩れ
-
被害総額
-

主な被害

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1か所で石灯籠が倒れ、信用組合の大倉庫の壁に亀裂、神社の屋根の一部崩落など、そのほか2〜3の民家で壁に亀裂が入ったところがあった。

商店の飾り窓が破損した。硝子戸あるいは屋根瓦などの破損は一般になかった。

石灯籠11個が転倒した。

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