被害【昭和54年3月強風】大分市
|災害番号:008920|固有コード:00892001
- 市町村
- 大分市
概要(被害)
風圧による建物の倒壊、かわら、トタンぶき屋根の被害が各地で起こり、特に、別府、大分両市が多かった。またビニールハウスが倒壊し、たばこ、きゅうり、メロン、いちごやぶどうなどの施設園芸作物に大きな被害が発生した。また電柱の倒壊に伴う断線により、約1万戸が停電した。
災害概要
3月29日9時には、黄海南部にあった1007ミリバールの低気圧から南東にのびる温暖前線が、九州の南海上にあって次第に北上した。この低気圧は、発達しながら東北東にゆっくり進んだ。低気圧に吹き込む暖かくて湿った南風が、大気の状態を不安定にさせ、積乱雲を発達させた。大分では、14時10分から18時20分まで雷電現象を観測した。その後、20時40分まで電光を記録している。また、13時ごろには県の西部から南部にかけて雨が降り出し、夕方には耶馬渓で1時間に25ミリの強い雨を観測した。しかし、夜半前には小降りとなり、29日の雨量は多いところで60ミリ内外であった。30日3時には黄海の低気圧は発達して994ミリバールを示し、9時には日本海西部に進み、992ミリバールとさらに発達した。この日も雷雲が発達し県内で落雷事故があった。また、この低気圧に吹き込む南の強風によって大分では10時ごろから風の息が強まり、12時には平均風速11.3メートルを観測し、最高気温も28.0度を示す異常さであった。その後、19時ごろまで風の息が強く、17時10分{こは最大風速13.8メートル(南西)、最大瞬間風速26.2メートル(南西)を記録した。低気圧は、15時には日本海中部に進み、さらに発達して984ミリバールとなり、21時には北海道の南西海上で978ミリバールと台風並の強さまで発達した。大分では19時に平均風速10メートルを観測してから風の息も次第に弱まった。なお、別府市では山越えの強風が地形による影響と重なり、風害がはなはだしかった。
低気圧に伴う諸特性:
(1)低気圧の発達が著しく、30日3時から同日21時までの18時間に、低気圧の示度が16ミリバールも深まった。
(2)発達した低気圧に吹き込む暖域内の南西風が県内全域に吹き、アメダス観測資料によれば、県内の最大風速は豊後高田で、15メートル(WSW)を記録した。大分では最大瞬間風速26.2メートル(南西)が3月としては1位を記録した。(従来の1位は22.1メートル(西北西)1972.3.31)
(3)別府市では、背後の山岳地形を吹き越す特珠地形による強風で、風害がはなはだしかった。
(4)低気圧の暖域内で大気の不安定現象が発生し、発達した雷雲による落雷事故があった。
(5)南西の強風による山超え気流のため、大分では3月としては観測開始以来1位の28.0度を記録した。従来の1位は27.5度(1973.3.28)であった。別府市の京大地球物理研究施設の観測では、30日18時10分に最大瞬間風速39メートル(西)を、また、18時20分に最大風速20.2メートル(西)(3杯風速計による)を記録した。
このたびの低気圧による被害は風害が大きく、ほとんど30日の14時から20時までにかけて発生した。被害は県内全域に広がったが、とくに、別府巿がはなはだしく、人的被害では県全体の82%が、また、建物被害ではその90%が別府市で発生した。別府市では強風災害対策本部を19時30分~23時30分に設置した。
(1)人的被害、強風による樹木の倒壊、トタン屋根、かわらや看板などが飛び、それらの飛散物による重軽傷者が多かった。
(2)家屋被害、風の息が大きく風圧による建物の倒壊、かわら、トタンぶき屋根の被害が各地で起こり、とくに、別府、大分両市が多かった。
(3)施設園芸被害、大分市、大野郡を中心に県内各地でビニールハウスが倒壊し、たばこ、きゅうり、メロン、いちごやぶどう等の施設園芸作物に大きな被害が発生した。
(4)その他の被害、大分空港では30日、08時50分ごろ、滑走路関係の送電施設に落雷があった。
また、大分市、別府市を中心に電柱の倒壊に伴う断線により、大分市では約1万戸、別府巿では約9千戸が停電した。国鉄では19時30分ごろ、日豊本線の大分~亀川間で架線が故障し、一時列車が遅延した。電々公社大分電気通信部の調べでは県内の電話被害は604件であった。
【出典:大分県災異誌 第4編(昭和46年~55年)(1981.12)】
災害データ
- 最低気圧
- 992.6hPa
- 最低気圧観測地
- -
- 最低気圧観測日時
- 1979/3/30 15:10
- 最大風速の風向
- 南西
- 最大風速
- 13.8メートル
- 最大風速の観測地
- 大分
- 最大風速の観測日時
- 1979/3/30 17:10
- 累積最大降水量
- 72ミリ
- 累積最大降水量観測地
- 大分空港
- 日最大降水量
- 66ミリ
- 日最大降水量観測地
- 大分空港
- 最大日降水量の観測年月日
- 1979/3/29
- 最大1時間降水量
- -
- 最大1時間降水量の観測地
- 大分空港
- 最大1時間降水量の観測年月日時間
- 1979/3/29 18:00
- 死者・行方不明者数
- -
- 負傷者数
- 58人
- 住家全壊/全焼数
- -
- 住家半壊/半焼数
- 4戸(棟)
- 住家一部損壊数
- 2337戸(棟)
- 床上浸水数
- -
- 床下浸水数
- -
- 道路被害 ※事前通行規制は除く
- -
- 橋梁被害
- -
- 山・崖崩れ
- -
- 被害総額
- 621,762 千円